オリンピックとサステナビリティ

7月26日~8月11日、8月28日~9月8日、フランス・パリでオリンピック・パラリンピック(パリ五輪)が開催されます。サステナビリティが注目される昨今、スポーツイベントなども例外ではなく、パリ五輪はこれまでで最もサステナブルな大会の実現をめざしています。具体的には、CO2排出量を2012年開催のロンドン五輪や2016年のリオ五輪と比較して半減するという目標を掲げ、競技施設の95%は既存・仮設のものを利用したり、観客の移動手段を公共交通機関(大会チケット所有者は無料で利用可能)や自転車に絞るなど、インフラ整備を進めました。さらに、CO2排出量を算出するカーボンフットプリントに加え、五輪史上初の取り組みとして、大会開催にかかる資源の総重量(マテリアルフットプリント)を算出するとしています。パリは、気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」が採択された都市でもあり、環境問題に積極的な姿勢を示しています。

五輪大会は、規模が大きいだけに、そこにかかるエネルギーも資材も莫大なことから、環境負荷の増大が問題視されています。2016年のロンドン五輪は史上最も環境に配慮した大会をめざし、CO2排出量を50%削減する「低炭素五輪」を掲げ、五輪では初めて、全期間を通してカーボンフットプリントを算出したり、廃棄物の埋立処分ゼロを宣言し、建物の解体・建設時に生じる廃棄物の100%近い再利用やリサイクルを成功させています。2021年に日本で開催された東京五輪も、CO2排出量実質ゼロを目標に掲げ、カーボンオフセットに注力した結果、結果的に、2010年から大会開催前の2021年6月時点で約2190万トンを削減し、期間中に排出された196万トンを大幅に上回る成果を生み出しました。一方で、約13万食の弁当の廃棄が問題となった大会でもありました。パリ五輪は、温室効果ガスの排出量を削減量が上回るクライメート・ポジティブをめざしています。そのために、すべての関係者がCO2排出量を削減できるよう、カーボンフットプリントの削減をサポートするアプリを開発したり、スポーツイベント用の「カーボンフットプリント計算機」を作成するなどの取り組みを実施しています。

大会開催のために必要となる物品・サービスの調達についても、環境面と社会面における高い基準が設けられています。サプライヤーに関しては「責任ある調達戦略」を適用し、製品やサービスにエコデザインの手法を採用、レンタルや長期寿命の製品を優先、環境負荷の低い原料の使用、製品の再利用やリサイクルを考えた解決策の提案、包装材の3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進、などの条件があります。パリ五輪のワールドワイドパートナーとなっている15社の中には、日本企業も名を連ねています。その他にも、大会組織委員会は1万社を超える企業から調達を行っています。こうした企業は世界的なレピュテーションも高まり、それが企業価値の向上につながり、サステナビリティ/ESG投資の対象として魅力ある企業と言えます。4年に一度の世界的なスポーツの祭典。競技での選手の活躍とともに、サステナビリティの観点からも注目してみてはいかがでしょうか。

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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