2月は、一年のうちで最もチョコレートへの支出が多くなる月です。政府の家計調査でも、チョコレートの売れ行きは2月前半に集中することがわかっています。
甘くて美味しいチョコレートですが、その原料となるカカオの栽培については、森林破壊や児童労働、生産者の低所得など、多くの課題を抱えています。そこで、最近は地球環境やカカオ農家の生活向上を考慮し、これらの問題を解決するための支援を行いながら栽培・収穫・取引されたカカオ――つまり「サステナブルカカオ」という言葉を耳にするようになりました。そして、グローバルに展開するチョコレート関連企業は、この「サステナブルカカオ」への取り組みを行っています。スイスのバリーカレボー社は、2025年までに自社が扱うチョコレートを100%サステナブルにし、児童労働をなくす目標を立てており、この会社から提供されるサステナブルカカオを使用する日本の製菓会社もあります。
その原料が、サステナブルな方法で調達されたものであることを証明するのが認証制度です。カカオで言えば、バリーカレボー社が設立した「カカオホライズン財団」による「カカオホライズン認証」や、熱帯雨林や野生動物、水資源の保護活動などを行っている国際的な非営利環境保護団体が認証する「レインフォレスト・アライアンス認証」などがあります。後者の「レインフォレスト・アライアンス認証」は、コーヒーや紅茶、バナナなども認証商品となっています。
その他にも、水産業でも乱獲や違法漁業によるクロマグロなど天然水産資源の枯渇が深刻な問題となっており、「MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)認証」や「ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)認証」の水産物の取り扱いを積極的に進めている企業もあります。また、パーム油のためのアプラヤシ農園開発による熱帯林破壊の問題が叫ばれるようになり、パーム油をめぐる問題と、持続可能なパーム油の生産・利用をめざす国際的な認証制度「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」もあります。
このような原料の調達先から製品の販売先まで含めたサプライチェーン全体の責任をとる動きが活発になった背景には、アメリカのスポーツメーカー・ナイキの児童労働問題がありました。1997年、同社の製品の製造を委託する東南アジアの工場で、児童労働や劣悪な環境下での長時間労働などの問題が顕在化したのです。これを受け、世界的な不買運動につながりました。
近年でも、2022年3月にご紹介した東南アジアや新疆ウイグルでの人権問題や、2022年4月にご紹介したロシアでの事業活動など、厳しい目が向けられています。消費者や投資家が、商品を購入したり企業に投資したりすることによって、知らないうちに人権侵害や環境破壊に加担したくないと考えるようになったからです。しっかりした調達を行っている商品を購入したり、その企業を投資によって応援することは、地球のサステナビリティにつながるものであり、消費者としてこのような制度への理解を深め行動することは、いわば「食べて参加するサステナビリティ活動」と言えるでしょう。
株式会社グッドバンカー
リサーチチーム