6月は上場企業の株主総会の季節。国内の機関投資家が、女性取締役がいない投資先企業に対し、取締役選任案などの総会議案に反対することを議決権行使基準に盛り込む動きが広がっています。
世界では、女性役員比率が高い企業の方が、ROE(株主資本利益率)やROS(売上高利益率)などの経営指標がよい傾向にある等の実証結果も出ており、早くから取締役会の多様性を重視していました。そして、近年は海外の機関投資家が、日本企業に女性取締役を増やすよう働きかける動きが見られます。2021年12月には、議決権行使助言業者最大手のアメリカのISS(Institutional Shareholder Services)が日本の上場企業向けの議決権行使助言方針の改定を公表し、2023年2月から、女性取締役がいない場合には、経営トップの取締役に対して反対を推奨する基準を導入するとしています。同じくアメリカの議決権行使助言会社のグラスルイス(Glass Lewis)は、2023年2月以降に開催される株主総会からは、プライム市場の上場企業については少なくとも10%以上の性別の多様性がない取締役会の場合、会長など最上級役員または指名委員長に対して、原則として反対助言を行う予定であるとし、方針を厳格化しています。
なぜ、多様性が求められているのでしょうか。ダイバーシティは、取締役会を活性化し、リスク低減に寄与し、企業価値向上につながると捉えられているからです。
例えば、今回のコロナ危機では、これまでの常識を覆す短期間でワクチンが開発されましたが、中心的な役割を担ったドイツのベンチャー企業ビオンテック(BioNTech)社の創立者はトルコからの、製薬会社のモデルナ社の創立者はギリシャ系、ファイザー社の創立者はアルメニア系の移民であり、世界中でワクチン開発に関わった人々の半分が女性であり、その国籍は60カ国に及んでいたそうです。このことは、多様性がいかに価値をもたらすかを示しているのではないでしょうか。
機関投資家が取締役会の多様性を重視する方針を打ち出す中、個人投資家でも、ESG投資によって、企業のダイバーシティを後押しすることができると思います。
株式会社グッドバンカー
リサーチチーム