アカデミックな視点から見るESG投資―気候変動リスクと市場効率性(その1)―

ESG投資が金融のメインストリーム化しつつある現在、アカデミックな視点からとらえたESG投資と、その有効性に関する多数の学術論文が発表されています。そのため、当社のアナリストは、これらの論文を読みこなし、必要であれば最新のESG評価に反映させることに努めています。

パリのロスチャイルドアセット社のSRIクロニクル(2020年7月号)が取り上げている「気候変動リスクと市場効率性」という論文について、当社アナリストが、どのように分析していくかをご紹介しましょう。

元になった論文の主要著者で、このコラムの著者でもあるハリソン・ホン氏は、コロンビア大学のファイナンス・エコノミックスの教授、数理ファイナンスの学者で、当社顧問が実際に会ったこともあるそうです。

この研究論文では、市場が気候変動によってもたらされる、または悪化するリスクを効率的に価格決定しているかどうかを調査しています。

そして、この前提となっているのは、ファイナンスに対する以下のような基礎知識です。

すなわち、

  • 株価は、企業の将来の利益群総額の現在価値であること
  • 従って、将来の「損失の可能性」=リスク(確定損失ではないが発生可能性が想定される)があれば、株価はそのリスクを織り込み、低下すべき。
  • そうしたリスク情報も含めて、市場にもたらされ、株価に織り込まれることで、合理的な株価が形成される。こうした市場がファイナンス理論の用語で「効率的市場」

分かりやすく言うと、まず、「株価」というのは、その企業の将来の推定されるキャッシュフローの現在の価値です。今期の実際の利益を反映したものではなく、予測される将来の利益に対して、今の金利で割り引くとこの数字、というものです。ただ実際には、この数字はぶれます。これがリスクで、それを加味して、株価と言うものは決まっていくのです。

この論文で言いたいことは何か、を考えると、気候変動の中でも、干ばつというのが、最も企業価値を損なうのであれば、株価にも織り込むべきだということです。このコラムは、「今の市場は、干ばつリスクを過小評価している。リスクを織り込まず、適正な価格設定ができていないのではないか」というのが主張です。例えば、気候調査のPalmer Drought Severity Index(PDSI)などのデータを見て、評価すべきだと言っています。

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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