コロナ後のライブイベント業界の命運は?―スペインのウェブセミナーに参加して―

7月中旬にスペインのIDOM社が、欧州スタジアム&安全管理協会と共同で、スタジアムやアリーナといったイベント施設がコロナ後の世界でどう変わっていくべきかというテーマのウェブセミナーを開催しました。

サッカーや野球などのプロスポーツ、そして音楽コンサートや演劇といったライブイベントで構成される業界は、多数の観客の来場・参加で成立するというその特性から、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、どの業界よりも早く自粛を開始し、そして最も再開が遅れている産業です。

今回、IDOM社の提言で特に興味深かったのが、これから新設または改修されるスタジアムやアリーナで必要になってくる『withコロナ』を念頭に置いた設備や概念です。

IDOMのスポーツ建築部門のハビエル・ダビラ事業開発部長はプレゼンの中で、これまではより多くの観客が公共交通や自家用車で集団でスタジアムやアリーナに足を運んでいた慣習が、今後は個人で徒歩で来場することが推奨され、公共交通による移動手段も回避されるのでは?と指摘しました。

また、スタジアムやアリーナには換気や消毒に必要な機器や空間設計が必須となり、施設内の購買端末だけでなく、トイレなどの水道やドアの利用においてもコンタクトレス(非接触型)技術の導入が重要になってくると話しました。ただ、同氏は、コンタクトレス技術は衛生上の安全性を確保するだけでなく、省電力や節水による持続可能な施設を実現するうえでも大きな意味を持つと強調しており、コロナ前から進んでいたサステナブル・ベニュー(環境にも人にも優しい会場・施設)化の動きにむしろ拍車がかかるかもしれません。

ただ、指紋や虹彩といった、生体認証の導入拡大については、個人情報保護の観点から、過度な導入には慎重になる必要があると牽制していました。

また、デジタルイノベーション以外の分野では、ウイルスの増殖を抑制する特性を持つ素材や建材の開発・導入が進めば、施設の安全性はより高くなるため、素材産業の動向に着目しているとのことです。

集客装置として認識されやすいスタジアムやアリーナですが、厳しい自粛や自制が求められている今般のような状況では、スポーツや芸術といった人間文化が感動を生み出すことも事実です。今、世界のスポーツ&ライブエンターテインメント業界は大きな岐路に立っており、感動体験と安全・安心の両方を実現できるハコを創れるかどうか、ソフトとハード両面での持続可能性がカギとなりそうです。

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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