国債が2010年のユーロ危機を機に、かつてのような安全資産でなくなり、信用度を測る需要が高まっていることから、国の社会的な責任を評価しようという動きが広がっています。
そうした流れの一つとして、世界銀行は2019年10月、CO2排出量や人口の増減、男女平等の進捗度など17項目の指標で、国・地域を比較したデータベースを初めて公開しました。
実際に閲覧してみると、CO2排出量など項目によっては1960年の数字まであり、データは豊富です。国・地域別に、ESGそれぞれの主要3項目(E:CO2排出量、森林喪失率、再生エネルギー生産量、S:失業率、電力へのアクセス率、識字率、G:男女の労働力比率、個人のインターネット利用率、政府の効率性)で、世界平均や東アジア・太平洋地域といった地域平均と比較できるページも設定されています。このデータベース公開には、より多くのESG投資が新興国に向かうよう、またその中でどの国が、持続可能な成長に積極的かを明らかにする狙いがあるそうです。
2019年12月にスペインで開催された、第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)で、日本は石炭火力発電中止の方針を示さなかったことで、多くの批判にさらされました。世銀のデータベース上でも、日本は、再生可能エネルギー生産量、CO2排出量とも、世界・地域の両平均には届いていないことが確認できます。こうしたツールが整備されていくと、取り組みが進まなければ、マイナス面も一目瞭然になってしまいます。
国が持続可能な発展をめざすため、例えばCO2排出量をいかに抑えるかについては、民間企業の環境経営が寄与するところは大です。また、人口の増減や男女平等に関しても、国の政策に加えて、各企業のダイバーシティ施策や働き方改革の進ちょくが、国全体の格付にも大きな影響を与えることになります。
つまり、国が社会的責任を果たすためには、政府や公的機関に任せるだけでなく、民間企業の貢献が欠かせません。企業は人で構成されており、方針を決めるのも、風土を醸成するのも、結局は、経営陣や管理職を含めた全社員の意識ということになります。国家の社会的責任が評価される時、それは、私たち国民一人ひとりが試されている、と言えるでしょう。
2020年は、日本の国家としての社会的責任の評価が大きく上昇する、そして日本国債へ、世界からESG資金が流入する、そんな一年になってもらいたいものです。
参考:
The World Bank Sovereign Environmental, Social, and Governance Data
http://datatopics.worldbank.org/esg/index.html
株式会社グッドバンカー
リサーチチーム