「地球の流れ」と「金融の流れ」

近年、地球温暖化など気候変動の問題に、地球全体の「流れ」が関与しているという仮説が、アメリカの気候変動研究機関Woods Hole Research Centerより提唱されています(1)。豪雨や熱波、豪雪等、世界で発生する異常気象は様々で、中には温暖化とは逆の寒冷化も含まれます。しかし、それらの根本には、温暖化が引き起こす、大きな「気流」の乱れがあるというのです。

地球の上層には偏西風、あるいはジェット気流と呼ばれる、強い風の流れが存在します。このジェット気流は、赤道から生じる温暖な空気と、北極・南極の寒冷な空気の間を流れて境界となり、各地域の気候を安定的に特徴づけてきました。

ところが、地球温暖化による北極の気温上昇により、ジェット気流の乱れが起こることが、環境モデルを用いた研究で示されました。海氷が溶け、暖かく湿った空気が上空へと大量に昇ると、北極に留まっていた冷たい空気が、外へと流れだし、それに気流が押されて大きく蛇行を始めるのです。空気の境界がずれることが、各地に異常気象を誘発します。冷たい空気が極端に南下することによる寒冷化、同様に、熱帯の空気が北上することによる熱波、そして、気流が真上を通る、日本のような場所では、湿った空気が急上昇して豪雨被害が発生します。温暖化の影響が多様な異常気象として現れ、連鎖的に世界へ広がるというのです。

実際に、先日の台風19号、昨年の西日本豪雨と熱波等、日本各地でも異常気象が頻発するようになりました。これら異常気象による全世界の経済損失は、2017年までの20年間で、252兆円に上ったと国連防災機関UNDRRは算出しています(2)。世界規模の環境対策が急務なのです。

ESG投資は全世界で3418兆円規模にまで発展し、存在感を高めています(3)。地球をとりまく「乱れた流れ」が大きく関わる気候変動は、ESG投資という巨大な「金融の流れ」をメインストリーム(主流)にすることで、安定化する可能性が出てきたのではないでしょうか。今後も「二つの流れ」に注目していきます。

参考文献

1) Francis, J. A. “Clarity and Clouds: Progress in Understanding Arctic Influences on Mid-Latitude Weather.” Arctic Report Card 2018 (2018): 74

2) UNDRR “UN 20-year review: earthquakes and tsunamis kill more people while climate change is driving up economic losses”

3) GSIA “2018 Global Sustainable Investment Review”

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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