グリーンはどんな緑?―グリーンボンド市場の健全な成長のために―

米議決権助言大手ISSがESGレポートの中で「グリーンボンドは玉石混交で、投資家に対して詳細な分析を示す必要がある」と指摘していますので、ご紹介しましょう。

グリーンボンドは、国際資本市場協会(ICMA)という機関が出した「グリーンボンド原則」などの基準があるとはいえ、「自己申告」の債券で、また「グリーンボンド原則」そのものも、自主的なガイドラインで、何らかの強制力があるわけではありません、

グリーンボンド原則の骨子は、①調達資金の使途、②プロジェクトの評価と選定のプロセス、③調達資金の管理、④レポーティング(開示)、の4本柱で、評価のポイントは有効なものと言えるでしょう。しかし、「ガイドライン」は一般原則のため、その具体的な解釈や適用は、個別企業の裁量によるところも少なくありません。最近日本で発行されたいくつかのグリーンボンドも、この原則に沿った形で情報公開をしていますが、さらに詳細な開示が求められます。

ISS/ESGのレポートでは、石油・石炭産業が再生可能エネルギー事業を開始するのはグリーンと言えるのか、生物多様性を損なう可能性のある水力発電用ダムを建設するための債券はグリーンなのか、といった評価が難しい事業へ投資する点にも言及しています。また、気候変動対策などの物差しがまちまちで、ボンド同士を比較しづらいので、やはり、格付機関の分析や評価のクオリティーを高めることが重要と言えます。

グリーンボンドの発行額は年々増え続けていますが、世界の発行額が1676億ドルに達するのに対し、日本は50億ドルに満たないのが現状です。しかし、今後の市場拡大が期待され、GPIFが早ければ来年にも、グリーンボンドへの投資を始める方針を示しています。ISS/ESGによるレポートでも、市場の健全な成長のためにも、投資家サイドの評価・分析能力の向上が重要と言及されています。グッドバンカー社のSRIアナリストも、格付を行う際に、企業の発行したグリーンボンドが本当にグリーンと言えるのか、またそれが長期的な競争力に結び付くのか、調達資金の使途のチェックなど注視しており、グリーンボンド市場の今後の拡大に期待します。

参考:グリーンボンド原則(2018年版)和訳

http://www.env.go.jp/policy/greenbond/gb/conf/conf_r0107/document.html

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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