ESGのSはサッカー?

先日、グッドバンカー社のアナリストは、あるサッカースタジアムを訪れました。緑豊かな大きな公園に隣接しており、昨年から大規模改修を実施した美しいスタジアムです。今回は、試合のない日のバックヤードツアーに参加し、日頃見られない、選手のロッカールームやウォーミングアップ場等を見学しました。ひとけの少ないスタジアムは、広々と感じられて新鮮でした。ホームゲームは月に数日で、残りの日に、このような素晴らしい施設が活用されないのは、もったいないことです。

欧州では、サッカークラブなどの民間団体がスタジアムを運営し、地域のシンボルとして機能している例が数多くあります。ピッチに面した客室を持つホテルやレストランは、試合の日の観戦席となるだけでなく、試合のない日の利用も可能です。スタジアム内に、スポンサー企業用の「名刺ボックス」を設置し、会議などを行えるビジネスラウンジ等を持つところもあります。ショッピングセンターやファンショップ、ミュージアムなどのほか、ベランダから観戦できる高齢者施設、幼いサッカーファンのための「保育所」などを併設するところもあり、地域住民らで賑わっています。試合のない日も自然と人が集まり、様々な人に新たな価値を提供できる多機能複合型施設として、存在しているのです。

日本でもこのような活用例がでてきました。あるスタジアムでは、コンコースをウォーキングコースとして日中に無料開放したり、プロスポーツの現場で培った技術を活用した「クリニック」を設立するほか、2019年6月、サウナのようなミネラル湯治施設を開業しました。このほかにも、フリーマーケットや、パブリックビューイングを兼ねたビアガーデン、ピッチでのキャンプなどさまざまなイベントを企画し、健康増進や人々の交流の場として、地域経済の核となることをめざしています。

日本には、Jリーグ所属チームが55クラブあり、その拠点の多くは地方都市です。それぞれのホームグラウンドが、質の高い観戦の場を提供するとともに、様々なサービスを兼ね備え、試合のない日も人が集まる仕掛けをつくることは、スタジアムを中心とした地方創生につながるのではないでしょうか。ですから、そこにビジネスとして積極的に関わる企業は、まさしくESGのS(社会との関わり)を競争力に結びつけている、と当社では評価しています。

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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