国境なき時代のESG―ある日本企業をめぐる海外メディア報道から―

最近ある企業が海外の合弁相手に資金を横領されるという事件があり、さまざまに報道されています。当社では企業の事件事故案件を、毎日モニタリングしており、株価への影響の可能性を注視しています。

そのため調査員を通して海外での報道もチェックしますが、今回現地ではあまり大々的に報道されなかったとのことです。

いくつかのウェブサイトでニュースが掲載され、当事件を報道しました。双方のメディアによる当事件を巡った報道に、2点において違いが見られたとのことです。

まず1点目は、横領が発生した会社との関係です。日本メディアでは「関連会社」と述べ、合資会社であり、当初それぞれ50%出資したとされていました。資金の不正流用が疑われた3人は合弁相手の会社から派遣され、事件が発覚した後に行方不明となっています。海外のメディアでは、「相関会社」という表現を使い、合資という資本関係を述べていません。かつ報道テーマは、「日本企業の現地会社」という表現を使い、読者に日本企業が全責任を取るべきだと誤解されそうでした。

注目したい2点目は、資金の不正流用が疑われた3人の関係に対する記述です。日本の報道では、今回不正に関わったとみられる60代の男性は、合弁会社の設立当初から社長を務め、取締役を務めるその息子も事件に関わっていると伝えました。海外ベースの現地語新聞は、「社長と取締役の親子に加え、出納係の女性も親戚関係とみられる」と記述。これに対し、現地の報道では、こういった記述は一切見られませんでした。

また、今回の事件とともに、合弁先の企業が2018年夏に無断で10億円の物件を処分したことも発覚。日本の会社と共同開発したマンションを自社の顧客に譲渡したそうです。この件に関しても、現地では報道されませんでした。

今回の件に関しては、日本側が「ガバナンスが甘い」と結論づけられ、会社の評判にキズがついたと見られます。合弁相手についても、「会社の監察が弱かった」というコメントがありましたが、数少ない現地の報道が、むしろ日本側により厳しく、実は被害者である日本企業のブランド価値が損なわれた可能性があるとのことでした。

このようにビジネスに国境がなくなる時代は、ESGのあり方、また発信の仕方も、その国の実情にあわせた戦略が必要で、今回の日本企業のように、知らない間に二次被害にあっているかもしれません。

そのためにも、世界を相手にビジネスをする日本企業では、人的資源の多様性が、競争力のみならず、リスク管理としても重要であると言えるでしょう。

参考:http://epochtimes.com/b5/19/3/15/n11116842.htm

     

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

Top