ESGとアニマルウェルフェア(動物福祉)

2021年11月18日、フランス上院が動物愛護に関する法改正案を賛成多数で可決しました。2024年から犬や猫のペットショップでの販売を禁止し、保護団体や個人からの譲渡、ブリーダーからの直接購入のみとなります。2人に1人がペットを飼うフランスでは、年間10万匹ものペットが捨てられ、夏のバカンスシーズンには何週間も放置されるケースなどが、1980年代から社会問題となっていました。法改正ではさらに、動物虐待や遺棄を厳罰化したほか、イルカ・シャチのショーや移動型サーカスでの野生動物の使用も禁止し、引き続きペットショップでの販売を許可するウサギや魚なども、ショーウィンドウでの陳列を禁止するそうです。大きな反発も出ていますが、人権感覚の高いフランスにおけるアニマルウェルフェア(動物福祉)への社会の意識の高まりが、改革を後押ししたとのことです。(*1)

アニマルウェルフェアの取り組みは、ペットだけでなく畜産動物にも広がっています。2021年8月、フランスの農業相は、2022年中に採卵鶏の雄ひよこの殺処分を禁止するとしました。雄ひよこは卵を産まず、食肉用としても雌より成長が遅いため、フランスでは年間5千万羽が粉砕機やガスによって殺されています。そこで、卵の段階で性別を判定できる機械の導入を業者に義務付け、補助金も支給するそうです。また、2022年1月から、肉の臭い消し目的で行われる麻酔を使わない雄ブタの去勢も禁止する方針です。(*2)

一方、日本の動物愛護法は2019年に4度目の改正が行われ、悪質なブリーダーやペットショップを抑制するための数値規制の厳格化や、生後56日(8週)に満たない犬猫の販売禁止、動物の殺傷・虐待・遺棄についての罰則も強化されましたが、日本はアニマルウェルフェアに関する世界的な動向のスタートラインに立ったばかりと言えます。

アニマルウェルフェアは、ESG投資においても伝統的に重要なテーマです。1990年代から、企業が行う医薬品開発や自動車事故の衝撃実験における、動物の使用が大きく批判されました。企業は長年、動物実験の代替法の技術開発に取り組んでおり、実験が避けられない場合には、国際的な実験動物の福祉の原則である3Rs(Refinement:動物の苦痛の軽減、Reduction:使用数の減少、Replacement:代替法の活用)のもと、その実施を最小限にする取り組みが増えてきています。人権が大事なように、動物の権利についても配慮がなされることは、動植物など生きとし生けるすべてのものと調和を保って、地球のサステナビリティをはかるSDGsの精神につながるのではないでしょうか。

参考:*1朝日新聞(2021年11月24日号)、*2 OVNI(2021年8月1日号)

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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