世界を席巻したCOVID-19(新型コロナウイルス)の感染拡大。日本では、行動制限の緩和案が検討されています。
一方、東南アジアでは、依然、毎日の感染者数が高止まり状態にあり、厳しい規制が講じられています。今回は、弊社アナリストがベトナムの通信員にヒアリングした、現地の様子をご紹介します。
ベトナムは、2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の世界で初めての制圧国です。その経験から、当初は政府が講じるコロナ対策には国民からの信頼は篤く、厳しい規制にも従ってきました。ところが、「ゼロコロナ」をめざしていたベトナムは、デルタ株の猛威に手を焼いています。同国では、「区」単位で感染リスクによるゾーニングを行っており、「区」をまたぐ移動も規制しています。町中にバリケードが張られ、道を封鎖し、検問を行っています。そのため、エッセンシャルワーカー以外の出勤は、許可証がなければ認められていません。製造業では、「3つの現場」政策を実施。「現場で生産、現場で食事、現場で睡眠・休憩」というもので、この認可を受けた工場しか稼働することはできません。このような閉鎖的な状況は精神的負担も大きく、帰宅を希望する労働者が続出しており、体制の見直しを求める声があがっています。
生活面では、今年5月からロックダウンを継続しており、店内飲食が禁止、7月からはデリバリーも禁止になりました。不要不急の外出は罰金、加えて規定を守らず感染し、拡大させると刑罰が与えられるという厳しい措置が講じられます。さらに、スーパーやコンビニに行くにも、QRコードで行動履歴が管理されます。8月下旬、週明けから配給制になるという噂が広がり、その週末は買い出し客で町は大混乱になったといいます。結局、配給は感染リスクの最も高いレッドゾーンにのみ行われ、それ以外の区域では、軍や共産党の青年団や婦人会が買い物を代行しているそうです。このような、トップダウンで一気に統制を図るところは、やはり社会主義国家といえそうです。
ベトナムのワクチン接種率は、8月時点で2%程度。国産ワクチンの開発にも着手しており、9月上旬に第二次臨床試験も終了しています。今後、ワクチン接種が進めば、状況も変わってくるでしょう。
ベトナムには、多くの日本企業が進出しています。グローバルに事業を展開している以上、他国のコロナ事情や対策も無関係ではありません。事実、ベトナムの医療体制の不備と、「3つの現場」政策に耐えかねて、多くの外国人が帰国しました。 日本では、工場の近くに社員を住まわせて、公共交通機関を利用せずに通えるようにした企業もあります。非常事態時に、どのように持続可能に事業を運営する体制を整えることができるか、個々の企業の判断・体制整備が注目されます。
株式会社グッドバンカー
リサーチチーム