Ⅰ.要約・ポイント
金融政策
- スイス国立銀行が3月21日、先進国の露払い役として利下げを決定した。FRB、ECBとも「6月の政策決定会合での利下げ」が市場コンセンサス。ECBの理事会は6月6日、FRBのFOMCは11・12日。英国BOEも6月20日の金融政策委員会で利下げの可能性が高い。
- 日銀は「マイナス金利政策」解除を決定し「アベノミクスからの脱却」を表明した。「金融政策の正常化」にさらに踏み出した。一方で「国債購入の継続(月間6兆円)」を言明することで、「金融緩和基調が継続」することを強調した。
- 米国の利下げ期待(2024年の利下げ回数)は一段と後退する。年初は6回の観測だったが、足元はFRBと共通認識の3回までトーンダウンした。FRBは物価反騰の兆しから2回程度に引き下げ時期も先送りする可能性も。
今後の注目点
- 米国景気はこのまま堅調推移なのか、ソフトランディングするのか?
- 日本の2025年の賃上げは今年並み(5%以上)を継続出来るのか?
- ECBの利下げ1回目は6月実施か、FRBも6月に利下げに動くのか?
- FRB、ECB、日本銀行ともに、今年後半から来年にかけての“次の1手”のタイミング、ペース、着地点はどうなるのか?
- 日本政府と日銀とのインフレ目標アコード(=2%)は見直しされるのか?
- ドル高・円安が進行して150円台での攻防だが、当局の出方は?
日本株
- 日経平均株価は、1月+2822円(+8.4%)、2月+2880円(+7.9%)と短期間で想定以上のペースでの値上がり。3月(~28日)は高値波乱の動きとなっているが、+1002円(+2.6%)と歴史的な高騰が続いている。年初来上昇率は、日経平均株価が+20.0%(+6704円)、TOPIXは+16.2%。
- 上昇相場の牽引役は、
- 半導体関連株(製造装置、検査装置、半導体部材メーカー)
- 企業構造変革企業(資本効率改善、株価割安是正)
- 高利回り・株主総還元銘柄
- 株価が高騰した背景として、ファンダメンタルズ要因と資金需給要因が貢献。
- 30年間のデフレ状況と10年間の異次元緩和からの脱却が見えてきた
- 円安による上方修正期待が継続する企業業績
- 東証が牽引している「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ解消」要請により上場企業が資本政策の見直しに動き出したことで、ROE(自己資本利益率)の改善が期待される
- 海外投資家が東京市場の変化・活性化・出遅れを評価
- 企業の自社株買いと「新NISA」による株式需給の改善期待
- 2024年3月期の予想増益率(連結営業利益)は前期比+17%。円安効果、インバウンド需要の復活、株価上昇による高額消費需要、コスト上昇が遅行した恩恵などが上方修正要因。2025年3月期予想は+11%。
- 短期的には過熱感と物色集中(半導体関連株)の兆候が見られる。株価収益率も17倍台に乗ってきたので、年初からの上昇相場も8~9合目か。
- 相場が一旦休止する切っ掛けとしては、
- 米国NY株の調整 … 半導体株の割高感(AIバブルの様相)是正
- 円高転換 … 日銀の利上げ、FRBの利下げのタイミング
- 企業業績見通しの下方修正 … 海外景気(欧州、中国の鈍化)、円高転換
田淵英一郎