Ⅰ.要約
景気・物価・政策金利
- インフレ高騰、中・長期金利は、2022年にピークを付けたとの見方が強まる。
- 米FRBは政策金利を今年前半に5%台まで引き上げた後、一旦様子見・小休止。ユーロ圏ECBはFRB以上に強硬姿勢、モーメンタム鈍化は見えない。日銀は黒田総裁退任(4月8日:2月に後継総裁決定?)までは現状維持。新年度以降は(後継人選にもよるが)出口戦略にシフト。
- “景気減速”“リセッション”懸念が強まる。米国は第1Qにマイナス成長入りの 可能性があるが、「マイルド・リセッション」という見方が主流。欧州は急激な政策金利引き上げとエネルギー不足から既に「景気後退」局面入り。日本は、欧米・中国に比べて景気、物価上昇とも低位での安定が続く。
- 中国の“ウィズコロナ政策”への転換により、世界景気の回復期待が高まる。期待先行なので、年央からの世界景気・物価見通しの不透明要因に。
- 短期的には“リセッション度合い”が、中期的には“インフレ懸念の有無”が、金融市場のリスク許容度を左右する。
- 日銀は、1月18日の政策決定会合では投資家からの圧力を抑え込んだが、金利構造・流動性低下などの債券市場の歪み・副作用は是正出来ず。
- 日銀は12月に金融政策を転換し、過去10年間の“アベノミクス”の幕引きを図る局面に(実質的に)移行した。次期後継総裁は2月にも決定・発表される。日本の公的債務規模、日銀の国債・ETF保有、野放図な当初・追加予算の編成、プライマリーバランスへの取り組みなど、課題は4月以降に持ち越された。
債券・為替・株式市場
- インフレ圧力の低下、金融政策のマイルド化、景気減速(「マイルド・リセッション」)の見方から、米国の長短金利は一旦低下。市場が織り込む「2023年での利下げ観測(期待)」は流石に行き過ぎか。
- FRBは、物価が目標水準(2%)まで低下するとの確信が持てるまでは、“引き締めスタンス”を堅持。政策金利を早急に5%台まで引き上げるというのが現時点での基本的な方針。
- 市場の楽観論とFRBとの間にはギャップがあり、これを諫める意図をFRBが持つ可能性がある。
- 今年前半の金利は強含み。年後半からは景気減速を織り込み、金利はピークアウトして反落局面に移行。
- 日本の短期・長期金利には、緩和修正を見越した投機筋の売りと、金利上昇による損失回避のヘッジ売りが続く。段階的な水準訂正の動きが継続。
- インフレ懸念の後退、米国長期金利がピークをつけて低下、などから米ドルは反落。ECB、日銀とは時間差から、ユーロ、日本円は相対的に強含み。
- 一方、日本が経済成長・物価・企業収益などのファンダメンタルズ面において相対的に安定的ということを海外投資家は評価する。「政治の不安定さ」「公的債務」「日銀BS懸念」はマイナス材料。
- 国内金利の上昇は直接的・間接的に株価にダメージとなる。直接的には金利上昇による割引率上昇から株式価値の低下、間接的には金利上昇がコスト増加と消費・購買へのブレーキから、企業業績にマイナス要因として働く。
- 企業業績の下方修正と、金利上昇による割引率(株価収益率)の低下から、今年前半の株価には下押し圧力が強まる。2024年からのNISA拡充は評価材料である。
- 日経平均株価の下値目処は24000円、上値目処は30000円。
田淵英一郎