石油消費削減のための 10 項目計画

ロシアのウクライナ侵攻により、需要・供給において、また価格変動において、予想外の変動に見舞われています。その対応策として、供給を増やすことと、需要を減らすことがありますが、私たちが取り組めるのは後者です。IEA は、夏場の石油需要ピークに入る前に、石油需要を抑制するために先進国がすぐに実行できる 10 項目の行動計画「石油消費削減のための 10 項目計画(A 10-Point Plan to Cut Oil Use)」を提案しました。これらを実行すれば、4 か月以内に先進国の石油需要を、日量 270 万バレル節約できると推定しており、これは 3 月時点で IEA が推計した、4 月以降のロシア産石油輸出の減少量である日量 250 万バレルを上回る量です。この 10 項目は、政府主導で進めるべきものもあれば、地方自治体などが直接実施できるものもあります。そして、個人や企業がウクライナ国民との連帯を示しながら、金銭的な節約につながる措置を自主的に実行できるものでもある、と IEA は述べています。

この 10 項目が、それぞれどれほどの石油需要量の節約になるのか、その効果が具体的な数値で示されています(カッコ内は日量の削減効果)。
「高速道路の最高速度を少なくとも時速 10km 引き下げ(約 29 万バレル)」「可能であれば1 週間に最大 3 日間の在宅勤務(約 50 万バレル)」「日曜に都市部での自動車走行を禁止する「カーフリー・サンデー」を導入(38 万バレル)」「公共交通機関の料金引き下げおよびマイクロモビリティ(自動車より小さい移動車両)や徒歩・自転車利用の奨励(約 33 万バレル)」「大都市における自家用車の交互利用規制(ナンバープレートによる自家用車の乗り入れ制限を週 2 回適用すると 21 万バレル)」「カーシェアリングの普及促進と燃料消費削減の取り組み(一定条件達成で約 47 万バレル)」「貨物トラックや商品配送の効率的な運行の促進(約 32 万バレル)」「可能であれば飛行機の代わりに高速鉄道や夜行列車を利用(約 4万バレル)」「代替手段があれば飛行機移動を伴う出張を回避(26 万バレル)」「電気自動車や燃料性能の優れた車両の普及促進(10 万バレル以上)」

これらの要素と構造的な対策を組み合わせることで、石油需要トレンドを長期的により持続可能な軌道に乗せることが可能になるとしています。これらの取り組みは、2050 年までに温室効果ガス排出実質ゼロをめざす取り組みにもつながるばかりでなく、エネルギー自給率の低い日本では、エネルギー安全保障の強化につながると言えます。企業においては、在宅勤務の導入や、移動・輸送手段の見直しを行うことで、この計画に参加することができ
ます。そして、そのような取り組みを推進する企業に投資する ESG 投資は、私たちの持続可能な生活を支える上で重要な行動変容の一つと言えるでしょう。

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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