導入から1年――新NISAの現在

2024年に新NISAが導入され、1年が経ちました。日本証券業協会による「証券投資に関する全国調査」では、2024年度のNISAの認知度は77.9%と8割に迫っています。2021年度の57.6%に比べても、20%以上増加しました。また、同調査によると、新NISA開始前後の行動変化について最も多かったのが「資産形成について興味を持ち始めた」(60.3%)で、次に「NISA口座での投資を始めた」(22.2%)となっています。

金融庁がこの2月に発表した「NISA口座の利用状況調査」の結果では、2024年12月末時点の速報値で、NISA口座数は2,560万4,058口座、年間新規買付額は成長投資枠とつみたて投資枠あわせて17兆4,485億2,714万円にのぼっています。

2024年9月末時点でのNISA口座数は、2024年6月末時点からの増加率でみると、20代が4.7%で最も高くなっています。また、買付額は他の世代より小さいものの、増加率では20代が最も高い(2024年9月末時点で6月末比42.2%増)ことは、特筆すべき点と言えるでしょう。

その背景には、老後資金不足への懸念に加え、2022年4月から高校での金融教育が必修化されたことも寄与しているかもしれません。金融庁が発表した資料では、「家計管理とライフプランニング」「お金の使い方」「お金の貯め方・増やし方」など6項目が取り上げられています。

日本人の金融リテラシーは、諸外国に比べ遅れていると言われています。日本銀行調査統計局の調査によると、日本人の家計の金融資産構成は、50.9%が現金・預金であり、投資信託と株式等の割合は19.6%にとどまっています。欧米と比較すると、現金・預金の割合が高く、運用資産の割合は低くなっています。その原因は、「金融リテラシーが低いため」と言われており、若い世代の金融リテラシーを高めるこうした動きは、歓迎すべき動向と言えます。

2024年に入り、ピーク時は60兆円と言われたタンス預金の残高が、同年9月には50.4兆円と10兆円近く減少しているとの試算があります 。新札の導入など、減少の理由はいくつかありますが、その一つに新NISAの導入が考えられます。タンス預金が新NISAに流れた可能性です。

このように、新NISAは投資によるお金の動きを活性化させていると言えます。多くの人が投資への関心を高めている今、どのような企業に投資して応援するのか――。改めて「お金の流れで持続可能な社会を構築する」ことを目的としたESG投資などへの認知を高め、自分たちの意志で運用ができるようになることを期待したいと思います。

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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