ESG投資の原点――投資で社会を変える

今月11日~24日まで、気候変動に関する国連の気候変動会議「国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)」が、議長国を務めるアゼルバイジャンの首都バクーで開催されました。欧州の気象当局が発表した世界の二酸化炭素排出量は、今年、過去最高を記録する見通しです。また、「Global Carbon Budget 2024」(世界のCO2収支)の報告によると、今年の世界の二酸化炭素排出量は416億トンに達し、昨年の406億トンから増加すると見込んでいます。このままでは、「パリ協定」で合意した1.5度の温暖化抑制目標は達成できないとみられており、国連環境計画(UNEP)による最新の排出ギャップ報告書も、今世紀中に最大3.1度上昇する可能性があると示唆しています。

11月はアメリカの大統領選も行われ、共和党のドナルド・トランプ氏が再選されました。トランプ次期政権は、環境重視のバイデン政権の政策を転換し、化石燃料を重視する見込みで、同国の気候変動対策に及ぼす影響が懸念されています。また、「パリ協定」からも離脱する可能性が高いと見られています。既に、アメリカの石油業界団体である米石油協会(API)は、トランプ次期政権に求めるエネルギー・環境政策を公表し、乗用車の排ガス規制の撤廃や液化天然ガス(LNG)輸出許認可の手続き加速などを求めています。しかし、二酸化炭素排出量の大部分は、石炭や石油、ガス燃焼によるもので、374億トンを占めており、その他は森林伐採や火災など土地利用によるものと試算しています。化石燃料からの排出量を削減することが、最も必要とされていると言えます。トランプ政権は、バイデン大統領が過去最大級の気候変動対策を盛り込んだ「インフレ抑制法」による支援を縮小すると述べており、今後の動向を注視する必要があります。多くの日本企業が、CCS事業やエネルギー開発、また蓄電池やEVなどの分野でアメリカに進出しており、影響を及ぼす可能性があります。これらの企業は、事業戦略や生産・販売計画などを見直しながら、世界的な気候変動の抑止機運の醸成と、実際の削減貢献が求められます。

また、気候変動対策に積極的だったEUでも、EUの産業界がアメリカや中国などに比べて多額の投資を強いられ、大きな負担となっているとして、対策や環境規制が生産コストの増加と国際競争力の低下につながっているとの反発も強まっており、従来の温暖化対策の見直しの必要性が議論されています。 エネルギー・気候変動シンクタンク「パワー・シフト・アフリカ」のディレクターを務めるモハメド・アドウ氏は、「世界が直面する最大の地政学的課題は気候変動だ」「気候変動に対応しなければ、私たちはこの惑星を失う」と訴えています。温暖化抑止に貢献している企業に投資する――今こそ私たちの投資行動も、原点に返ることが求められているのではないでしょうか。

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム

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