Ⅰ.東京株式市場
概況
- 日本株(日経平均株価)は2月22日、1989年末の史上最高値(38915円)を34年ぶりに更新した。年初来の上昇幅は5634円(+16.8%)で、1日立会日当たり@166円上昇している。TOPIXの上昇率は+12.4%。半導体関連株、構造改革銘柄が相場上昇の牽引役。
- 株価上昇の背景としては、
- 長年続いた日本のデフレとマイナス金利からの脱却が見えてきた
- 好調な企業業績 … 上方修正期待
- 東証が牽引している「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ解消」要請により上場企業が資本政策の見直しに動き出したことで、ROE(自己資本利益率)が改善してきた
- 海外投資家が東京市場の変化・活性化・出遅れを評価(G7で唯一史上最高値を未更新、円安の進展により株価水準が割安に見える)
- 企業の自社株買いと「新NISA」による株式需給の改善期待
- ニューヨーク株式市場は「マグニフィセントセブン(M7)」(ハイテク・半導体関連銘柄)が引き続き相場上昇の牽引役。直近発表された決算では、Microsoft(クラウドコンピューティング・サービス)、Facebook(Meta)(インターネット広告、AI活用)、Amazon(クラウドコンピューティング事業)、Google(Alphabet))(インターネット広告)、NVIDEA(GPU、AI半導体)などのネット、クラウド関係ビジネスが再成長局面にあることが確認された。
- 1989年12月末の史上最高値(38915円)を34年ぶりに更新したことで、当時との比較により「バブル状態」との見方が一部に出て来ている。上昇スピードも急速であることから警戒感も強まっている。しかし過去からの相場経験則からは、
- 「国策に逆らうな」(企業改革、資本政策、収益性向上、コーポレートガバナンス改革)(株価割安・低PBR状態是正、資本コストとROE重視)
- 「株は変化を買う」 … 「デフレ&マイナス金利」からの脱却
- 調整期間が長いほどポテンシャルが蓄積されている
- 「金融相場(ステージⅠ)から業績相場(ステージⅡ)」
- 「マクロ要因(政治、金融政策)と「ミクロ要因(企業変革)」の相克
- 1980年代はカネ余りの空疎な理論(「含み資産」「Qレシオ」など)を根拠とした需給相場
- 現状は計上収益と収益性の裏付けがある投資価値から判断出来る価格形成
- PER(株価収益率)=16倍は割高とはいえない
- 東京市場では半導体関連株、割安バリュー株、高配当株などの循環物色が続く。半導体関連銘柄では東京エレク、アドバンテスト、ソフトバンクなど、業態革新・資本政策転換関連銘柄では日立、三菱重工、三菱商事など、高利回り株では海運株、総合商社株、銀行株などが相場の牽引役となっている。
- 今年期待の買い主体は、海外投資家、法人(自社株買い)、個人(新NISA)。年初からの7週間(~2月16日)で、海外投資家は現物株を2.7兆円買越し、法人は▲2.3兆円、個人は▲1.0兆円、とりあえず売り越している。
今後の見通し
- 今年の前半は“株高要因”と“イベント材料”の継続により基調変わらず。
- 企業業績が堅調
- 春闘での昨年を上回る賃上げ実績(3月から4月)
- 日銀によるマイナス金利解除・正常化(4月?)
- 政府による「デフレ脱却宣言」(4月?)
- 定額減税・給付金の実施(5月から6月)
- 年央から年後半の懸念・弱気材料としては、
- NY市場の金利水準との比較での割高感
- 日銀による金利正常化(2回目)の不透明感
- 岸田政権・自民党政治の行方(解散・総選挙実施?)
- “トランプ2.0”政権の可能性から、世界政治(EC、ロシア)・軍事(NATO、ウクライナ)・経済(中国、日本)の暗転への懸念
田淵英一郎