Ⅰ.東京株式市場
概況
- 日本株(日経平均株価)は23年6月高値(33772円)、8月(33488円)、9月(33634円)、11月(33853円)のボックス圏での上値抵抗水準を、1月10日に抜けて34000円台に突入したことで新たな上昇相場が始まった。TOPIXは昨年9月15日の高値(2438)を、今年1月10日に抜けた(終値:2444)。JPX日経400、日経300も同様。
- 日本株の新たな上昇相場の背景としては、
- マクロ要因離れ(政局混乱、日銀の金融政策)
- 企業業績の上振れ(上方修正)期待
- コーポレートガバナンスの改革・進展への期待
- 企業の資本政策の見直し(対売上、対資本収益性の改善)を評価
- 先進国のなかでの東京株式市場の出遅れ感(G7で史上最高値を唯一未更新)
- 海外投資家、個人投資家、企業自社株買いと買い主体が揃い踏み
- 中国、香港市場からの投資資金が東京市場にシフト
- 「新NISA」スタートによる新規投資資金の流入期待
- ニューヨーク株式市場では、「GAFA」「MEGA7」と呼ばれている一握りのハイテク・半導体関連銘柄群が相場上昇を牽引している。東京市場もNY市場に連動することで半導体関連銘柄が爆走しているが、主役は業界を代表する大型株(ソニー、東京エレク、日立、伊藤忠商事など)が相場の牽引役である。
- 海外投資家は2023年に、現物株を3.1兆円、先物も3.1兆円買い越した。個人投資家は現物株を2.9兆円、先物を0.3兆円売り越し。24年年初からの3週間(~19日)では、海外投資家は現物株に1.4兆円の買いを入れたが、先物は0.8兆円売り越している。個人投資家は新NISAでの買いが期待されたが、1.6兆円売り越している。
今後の焦点
- 古からの有名な相場格言である『国策に逆らうな』。
- 30年間続いた“デフレからの脱却”
- 日銀が“金利の正常化(金利ある世界)”に着実に動いている
- 企業が滞留してきた内部留保の資本効率(前向きの投資、株主への増配)の是正に動き始め、経営リスクを取るように転じてきた
- 今年から始まった“新NISA”は若年層(長期保有)投資家を覚醒させる大きな起爆剤、資産運用への意識が高まり、株式市場に着実に投資資金の流入が続く
- これから年央にかけても“株高の好材料”が見えている。
- 企業業績発表での上方修正の確認(1月下旬から2月) …> 足元では中国景気の悪化による電機・機械・化学の下振れ懸念が台頭
- 春闘での昨年を上回る賃上げ実績(3月から4月)
- 米国FRBによる利下げ観測の高まり(4月から6月)
- 日銀によるマイナス金利解除・正常化(4月?)
- 政府による「デフレ脱却宣言」(4月?)
- 定額減税・給付金の実施(5月から6月)
- 日経平均株価の史上最高値(1989年末:38915円)を意識した上値追い展開が続く。今年前半に株高条件が多く、後半は円高と米大統領選挙が弱気材料。
田淵英一郎