7月、アメリカのバイデン政権がウクライナに対し、殺傷能力が高いクラスター爆弾を供与することを発表し、既にウクライナに到着し、使用されたことが報道されました。これに対し、ロシアも報復、双方で使用が相次いでいる可能性が指摘されています。
クラスター爆弾とは、小さな子爆弾を内蔵しており、空中で爆発してそれらを広範囲にまき散らす仕組みになっているものです。不発となる子爆弾もあり、それらは除去するのが難しく、紛争終了後も長期にわたり民間人に被害を及ぼす危険があることから、「非人道兵器」とも呼ばれています。2010年にはクラスター爆弾禁止条約が発効し、2023年3月時点で111カ国が批准・加盟しており、日本も加盟しています。この条約では、クラスター爆弾の製造、貯蔵、使用、移譲が禁止されています。アメリカ・ロシア・中国などは、この条約に加盟していません。
2017年、オランダを拠点とする国際NGO「PAX」が公表したある報告書が話題になりました。それは、クラスター爆弾の製造会社6社に対する、銀行、年金基金、保険会社など160社以上の金融機関による投資が、2013年6月から2017年3月の約4年間で310億ドルに達したというものでした。そして、投融資を行っていた金融機関のうち15機関は、クラスター爆弾禁止条約の批准国の企業だったのです。PAXは、このような投資は容認できるものではなく、企業の評価に影響するリスクもあるとの認識が投資家の間に広がっていると指摘しました。そして、兵器製造会社6社に投融資している機関を「不名誉リスト」、投融資を禁止している機関を「名誉リスト」、投融資禁止に取り組んでいるものの不十分な機関を「次点リスト」に分類し、公表したのです。
7月11日から12日まで、ロシアと国境を接するバルト三国のリトアニアで「NATO首脳会議」が開かれました。ウクライナの加盟は見送られたものの、G7各国が長期的な支援を行う方針を表明しました。ただ、アメリカによるウクライナへのクラスター爆弾供与については、NATO加盟国の中でも立場が分かれているようです。先述のクラスター爆弾禁止条約には、NATO加盟国31カ国のうち、アメリカやトルコなどを除く23カ国が批准しています。スペインやカナダが供与や使用に反対する考えを示したほか、イギリスは禁止条約に加盟していることを強調しています。 ESG投資においても、クラスター爆弾をはじめ、対人地雷や化学兵器、生物兵器の製造に関わる企業への投融資を禁止したり、インデックスから除外するといった金融機関、金融商品があります。このような商品に投資を行うことも、個人ができる意思表示の一つではないでしょうか。
株式会社グッドバンカー
リサーチチーム